整備管理者制度の解説

平成30年10月
国土交通省関東運輸局

<総論>

1-1.整備管理者制度の趣旨について

整備管理者制度は、本来、使用者が道路運送車両法(昭和26年法律第185号。以下「法」という。)第47条の規定等に基づき、その使用する自動車の点検及び整備並びに車庫の管理について自主的に安全確保及び環境保全を図るための注意を払うべきであるものの、

  • 使用する自動車の台数が多い場合には、使用者自らが点検・整備について管理することが困難となり、管理・責任体制が曖昧になるおそれがあること
  • 大型バスのような車両構造が特殊な自動車で事故の際の被害が甚大となる自動車を用いる場合には、専門的知識をもって車両管理を行う必要があること

等から、整備管理者を選任し、使用者に代わって車両管理を行うことにより、点検・整備に関する管理・責任体制を確立し、自動車の安全確保、環境保全を図るために設けられているものである。

1-2.整備管理者の業務及び役割について

整備管理者に求められる業務は、上記の趣旨に基づいて、法第50条において「自動車の点検及び整備並びに自動車車庫の管理に関する事項を処理」することとされている。

具体的には、整備管理者は少なくとも

  • 日常点検について、その実施方法を定め、それを実施すること又は運転者等に実施させること
  • 日常点検の実施結果に基づき、自動車の運行の可否を決定すること
  • 定期点検について、その実施方法を定め、それを実施すること又は整備工場等に実施させること
  • 上記以外の随時必要な点検について、それを実施すること又は整備工場等に実施させること
  • 日常点検、定期点検又は随時必要な点検の結果から判断して、必要な整備を実施すること又は整備工場等に実施させること
  • 定期点検又は前号の必要な整備の実施計画を定めること
  • 点検整備記録簿その他の記録簿を管理すること
  • 自動車車庫を管理すること
  • 上記に掲げる業務を処理するため、運転者及び整備要員を指導監督すること

の業務を行うことが必要である。

道路運送車両法施行規則(昭和26年運輸省令第74号。以下「規則」という。)第32条第1項の規定により、使用者は、整備管理者がこれらの業務を適確に遂行できる体制を整えるとともに、整備管理者に、上記の業務を行うために必要な権限を与えなければならないこととされている。

これは、使用者の内部組織における整備管理者の執行する業務とこれに伴う権限を明確にし、自主管理体制の確立を図るとともに、整備管理者に使用者から独立した権限が与えられることにより、仮に利益追求を最優先する使用者が安全確保・環境保全を軽視して自動車を運行させようとした場合であっても、整備管理者が利益追求のみにとらわれることなく安全確保・環境保全の観点から運行可否の決定等を行い、適切な車両運用を確保させるために規定されているものである。

自動車の安全な運行のためには、適切な運行可否の決定が必要不可欠であるが、そのためには、日常点検の実施結果に係る情報が必要である。また、日常点検には、走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に実施する項目もあり、そのような項目を適切に実施するためには、前日までの実施状況等を踏まえて日常点検を行うことが望ましい。

ついては、日常点検を実施した際には、その結果を点検実施者が記録したうえで整備管理者に報告するとともに、整備管理者がその記録の保存・管理に努めるよう指導されたい。

なお、記録の様式については特に定めないが、事業者の負担を考慮しつつ、少なくとも日常点検を実施した車両及び点検の実施結果(基準に適しているか否か及び基準不適合箇所)について確認可能であるもの(例:日常点検表)とされたい。

また、点検整備記録簿については、自動車に備え置き、定期点検整備等を実施したときに記載することが義務付けられているが、整備管理者が適切に管理を行うためには、営業所において記録の参照ができることが求められる。

ついては、以下の2点を実施するよう整備管理者を指導されたい。

  • 定期点検整備の実施計画は、点検整備を実施した旨をその年月日等の情報とともに記載し、営業所において保存すること
  • 点検整備記録簿の写し又は電子的記録等のこれと同等と認められるものを営業所において保存すること

1-3.整備管理規程について

今般、規則第32条第2項を新設し、整備管理者の業務内容、地位等を明示することにより自主的な車両管理体制を確立させるため、整備管理者の義務として、規則第32条第1項各号に掲げる事項の執行に係る基準に関する規程(以下「整備管理規程」という。)の策定を明記した。

当該整備管理規程には、規則第32条第1項各号に掲げる権限に基づく業務が明記されていることが最低限必要であるが、それに加えて、いかなる権限を付与するか等については使用者の業態等によるものであることから、整備管理規程の策定に当たっては、事業用、自家用の別又は使用車両数等の実情をよく考慮して指導すること。

また、整備管理規程は可能な限り具体的に記述されていることが必要であり、規則第32条第1項各号に掲げる事項を形式的に記載することで事足れりとすることのないよう特に留意されたい。

さらに、整備管理者は、上記の整備管理規程に基づき、その業務を行わなければならないことを明記したことから、違反事実が発覚した場合には、法第53条に基づく解任命令を発令することが必要であるため、この運用については、厳正に対処されたい。

1-4.使用者の義務

使用者は、法第50条の規定に基づき、整備管理者を選任し、自動車の点検及び整備並びに自動車車庫の管理に関する事項を整備管理者に処理させることはもちろんのこと、選任した後であっても、法に規定される自動車の点検・整備を行う義務、保安基準に適合した状態を維持させる義務、継続検査等の検査を受検する義務等を負っている。

このため、整備管理者を選任したからといって車両管理を整備管理者に任せきりにするのではなく、使用者自らも整備管理者が適切に車両管理を行っているか、自動車が適切に整備されているかについて、常に注意と指導・監督を怠ってはならない。

上記に加えて、使用者は、規則第32条第1項の規定により同項に掲げる権限を整備管理者に与え、整備管理者が適切に業務を行うことができる体制を整えなければならない。

なお、民法第715条(使用者責任)の規定にかんがみると、使用者が整備管理者に相当の注意及び監督を尽くしていたにもかかわらず、整備管理者がその業務を怠った場合には、使用者には責任はないと解されるが、使用者が整備管理者を選任し、必要な権限を与えたことのみでは、「相当の注意及び監督を尽していた」との証明にはならない。事故発生時の場合等、使用者がこの条文を悪用することによって、使用者本来の責任を回避しようとする傾向を生じさせないよう、機会あるごとに、使用者に使用者の義務を説明するとともに、定期的に整備管理者から車両管理状況についての報告を受けることを指導する等、慎重な対応を要する。

1-5.整備管理者の地位について

整備管理者の地位は、付与される権限の広狭により定まってくるものであるが、その権限の広狭に関わらず、本質的に整備管理者は、使用者に代わり点検・整備を励行させる監督者であり、使用者に対しては、安全確保及び環境保全を図るためから自動車の整備計画又は車庫の改善計画等を進言する第三者的性格である。臨時検査のような強制手段によらずに、自動車の安全性を確保する手段としてこの第三者的性格に重要な意義を持っている。

このような性格をもつ整備管理者は、本来の業務を適確に遂行するためには、使用者の内部組織において、必要な地位を有する職員であるべきと考える。

<選任要件>

2-1.整備管理者の選任要件の見直しについて

① 見直しの趣旨

今般の見直しは、法において、使用者の保守管理責任が明確化され、使用者による走行距離等の使用実態に応じた自主的な点検・整備の実施が重要となってきている一方、近年の自動車技術の進歩等から、マイカーをはじめとする自家用乗用車の保守管理については、特段の専門的知識を必要としない車種が増加していること等の状況の変化を踏まえ、可能な限り使用者の負担軽減を図るため、整備管理者を選任しなければならない自動車の種類及びその台数について見直したものである。

② 見直し概要

上記の見直しの趣旨に基づき、整備管理者を選任しなければならない要件(以下「選任要件」という。)に係る自動車は、保守管理について特段の専門的知識を必要とする車種に限定した。

具体的には、規則第31条の3に規定するとおりであるが見直した箇所及びその理由はそれぞれ以下のとおりである。

  • 自家用マイクロバスについて1台以上から2台以上に緩和
    自家用マイクロバスを1台しか使用していない場合には、使用者がその自動車をマイカーとして利用するなど、使用形態が複雑ではないことが多いことにかんがみ、可能な限り使用者の負担軽減を図るため緩和した。
  • 自家用乗用車について選任不要に緩和
    近年の自動車技術の進歩等から、自家用乗用車については保守管理について特段の専門的な知識を必要としなくなったことにかんがみ、可能な限り使用者の負担軽減を図るため緩和した。

なお、10台以上の自動車を使用している使用者であっても、事業用トラックを4台、レンタカーを9台使用しているような使用者や自家用乗用車を10台以上使用しているような使用者については、規則第31条の3各号に掲げる要件に至っていないことから、選任の必要はない。

2-2.今改正により選任不要となった使用者について

現在、整備管理者を選任している使用者であって、今般の見直しにより、選任要件から外れた使用者については、当然のことながら、今後は選任の必要はない。

このような使用者に対し、選任が不要となった旨等を改めて届け出させる必要はないことから、各支局等において特段の対応は必要ないが、可能な限り選任要件の見直しについて、周知に努めること。

2-3.MOTASによる確認について

平成16年1月にMOTASが更改され、整備管理者の選任を要する使用者の検索が可能となったことから、登録管理室より入手したデータを定期的に送付するので、整備管理者台帳を確認し、整備管理者を選任しなければならないにもかかわらず選任していない使用者に対して必要な指導をすること。

なお、MOTASで検索した結果については、毎年度3月末時点のデータを4月又は5月に送付することとする。

<資格要件>

3-1.整備管理者の資格要件の見直しについて

① 見直しの趣旨

今般、整備管理者として選任される者が備えなければならない要件(以下「資格要件」という。)の見直しは、使用者の負担を軽減するとともに、自動車技術の進歩、使用実態の変化等により、整備管理者に求められる能力が整備を実施するような技術面の能力(技術能力)から、点検・整備状況を管理する能力や運転者に対して点検させるよう指導する能力(管理能力)にその比重が移っていることを踏まえて、求められる能力を備えた者を整備管理者に選任させるために行ったものである。

② 見直し概要

上記の趣旨を踏まえて、以下のように見直した。

(1) 実務経験年数の緩和等

主として技術能力を有することを確認するための点検又は整備に関する実務経験を5年から2年に緩和し、整備の管理に関する2年の実務経験を有していること資格要件として認めることとするとともに、主として管理能力を備えさせるための選任前研修(規則第31条の4第1号の研修をいう。以下同じ。)を修了していることを資格要件として追加することとした。

なお、「整備又は改造」と「点検又は整備」は、基本的には同義であるが、その解釈については、3-2に示すとおりである。

(2) 学歴による実務経験短縮規定の廃止

近年の自動車技術の進展等により、自動車技術が専門化してきており、機械系学科を修了したからといって自動車の構造等に関する知識等を備えているとはいえず、整備管理者に必要な知識・能力が備わっているとはいえなくなっていることから、当該規定を廃止することとした。

3-2.資格要件の解釈について

規則第31条の4各号の規定については、下記のとおり解釈して差し支えない。

① 第1号関係

(1) 「点検又は整備に関する実務経験」とは、以下のものをいう。

  • 整備工場、特定給油所等における整備要員として点検・整備業務を行った経験(工員として実際に手を下して作業を行った経験の他に技術上の指導監督的な業務の経験を含む。)
  • 自動車運送事業者の整備実施担当者として点検・整備業務を行った経験

(2) 「整備の管理に関する実務経験」とは、以下のものをいう。

  • 整備管理者の経験
  • 整備管理者の補助者として車両管理業務を行った経験(平成19年7月9付け国自整第59号による改正以前の代務者としての経験を含む。)
  • 整備責任者として車両管理業務を行った経験

(3) 「整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車」とは、

  • イ) 二輪自動車以外の自動車
  • ロ) 二輪自動車

の2種類である。

平成15年4月より、実務経験については、「整備の管理を行おうとする自動車と同種類の」との限定をしたが、これは、一定の実務経験を有しているといっても種類の異なる自動車の車両管理を行うことは困難である、との考えに基づくものである。

例えば、二輪自動車専門の整備工場での経験では、他の種類の整備管理を行うことは困難であると解され、四輪自動車の整備管理者になることはできない。

このため、選任届を受理する際には、その点について留意し、届出書の内容を確認する必要がある。

なお、実務経験を積んだ整備工場等で、両方の車種の整備等を行っていた場合には、整備等を行っていた全ての車種に係る実務経験を有しているとみなせることから、両方の車種に係る整備管理者に関する資格要件を満たすと解してよい。

また、選任される事業場で最も多く使用されている自動車に係る実務経験を有していれば、当該事業場に異なる車種の自動車があったとしても、資格要件を満たすと解して差し支えない。

(4) 「選任前研修の修了」については、全国どこの運輸支局の選任前研修を修了してもよいこととし、選任前研修修了証明書(7.参照)を有していることにより確認することとする。

なお、当該研修については、いつ修了した研修であっても、資格要件として認めることとする。

② 第3号関係

現時点において、該当するものは想定していないが、今後必要に応じて認めることとする。

なお、昭和46年10月9日付け自整第265号の自動車局整備部長通達中2.及び5.による自家用自動車の整備管理者の資格要件付与条件について、一部の地方運輸局においては、これを拡大解釈し、運転免許取得後、5年経過することにより資格要件を満たすと解釈していたところもあるが、今後はこのような運用は認めないこととしたので、法令及び上記の解釈に基づき、厳正に運用されたい。

3-3.附則について

省令の附則第2項において、省令の施行の際現に整備管理者に選任されていた者については、改正後の資格要件を満たす者であるとみなすこととする。

この規定により、平成15年4月1日現在で整備管理者に選任されていた者については、特段の手続を行うことなく引き続き整備管理者として、その業務を行うことができる。

また、施行日に現に整備管理者に選任されていた者が、その後、別の使用の本拠の位置の整備管理者に選任される場合であっても、当該者は、改正後の資格要件を満たすとみなすことから、「整備の管理を行おうとする自動車と同種類の」との限定はかからないと解される。

しかしながら、省令の施行前に整備管理者に選任された経験がある者であっても、施行日に選任されていなかった者については、附則の規定は適用されず、整備管理の実務経験を有しているにすぎないことから、改めて選任前研修を修了する必要があり、また、「整備の管理を行おうとする自動車と同種類の」との限定がかかると解されるので留意されたい。

<選任届>

4-1.選任届の様式

選任届の様式は適宜定めて、それに従うよう指導して差し支えないが、選任届には当然ながら規則第33条第1項各号に掲げる事項を記載させることが必要である。

なお、別紙1に様式の雛型を定めたので、参考にされたい。

4-2.選任届の添付書類

規則第33条第2項に規定する選任届に添付すべき書面のうち、「信じさせるに足る書面」とは、地方運輸局長が信ずるに足る学校や協会等の証明書といった届出者に利害関係のない第三者が証明する書面であるべきであるが、このような書面が得られがたい場合には、本人の履歴の誓約書又は使用者の使用証明書(労働基準法第22条参照)を提出させること。

また、選任届の届出に際しては、整備管理者の責務を被選任者に自覚させるため、当該整備管理者となる者が同意している旨を確認できる書面を提出させること。

さらに、一定の条件を満たすグループ企業(会社法(平成17年法律第86号)第2条第3号の2及び第4号の2に定める子会社等及び親会社等の関係にある企業及び同一の親会社等を持つ子会社等をいう。以下同じ。)内において整備管理者を外部委託(他の企業に所属する職員から整備管理者を選任することをいう。道路運送法(昭和26年法律第183号)第35条に基づく事業の管理の受委託により、運行管理業務と一体的に委託している場合を除く。)している場合又は自家用自動車について外部委託している場合には、下表に示す必要書面を併せて提出させること。

ただし、同意している旨については、選任届に記入させることに代えても差し支えない。

上記の必要書面を含め、選任届の際に必要な書面は下表のとおりとする。

提出が必要な届出者 必要書面 備考
①外部委託をしない場合

○整備管理者が資格要件を満たしていることを証明する書面

<第1号(実務経験)の場合>

  • 「点検又は整備」、「整備管理者」、「補助者又は整備責任者」の業務を行っていた経歴が記載された書面(当該業務を行っていた事業主の押印又は自筆署名があるもの又は使用証明書)
  • 上記が提出できない場合には、2年の実務経験を有することがわかる選任後研修(旅客自動車運送事業運輸規則(昭和31年運輸省令第44号)第46条及び貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)第15条の研修をいう。以下同じ。)の修了を証明する書面等の写し
  • 選任前研修修了証明書の写し

<第2号(整備士)の場合>

  • 合格証明書の写し

○整備管理規程

<補助者を選任する場合>

  • 「5-1.整備管理者の補助者について」の(1)~(5)に定める条件を満足していることを確認。
  • 押印を必須条件とすることは閣議決定により禁止されているため、注意すること。(以下同じ。)
  • 車両管理を行おうとする自動車と同種類か要確認。
  • 提示でも構わない。
  • 不適切な場合には届出時に指導するとともに、整備管理規程の内容が実際の業務に即していない場合には解任命令の発令対象となり得ることを通知すること。

○被選任者が、過去2年間(規則第31条の3第1号又は第2号の規定の適用を受けて選任される整備管理者にあっては、5年間)のうちに、解任命令を発令された者でないことが記載された書面

(被選任者が証明し、その押印又は自筆署名があるもの)

○被選任者が届出書の内容に同意したことがわかる書面

(被選任者の押印又は自筆署名があるもの)

②グループ企業内(委託先と委託元が同一のグループに属する場合を指す。以下同じ。)において、整備管理者を外部委託する場合

○整備管理者が資格要件を満たしていることを証明する書面

(確認のポイントは①に同じ。)

○外部委託先がグループ企業内であることを証する書面

(登記簿、営業報告書等及び組織図等)

○整備管理規程、安全管理規程その他の規程類

  • 「5-3.整備管理者の兼職及び外部委託について ②外部委託 ○グループ企業内の場合」の(2)に定める条件を満足していることを確認。
  • <補助者を選任する場合>「5-1.整備管理者の補助者について」の(1)~(5)に定める条件を満足していることを確認。

○委託先の事業主の同意書

(押印又は自筆署名のあるもの)

  • 提示でも構わない。
  • 提示でも構わない。

○被選任者が届出書の内容に同意したことがわかる書面

(被選任者の押印又は自筆署名があるもの)

○適切な車両管理が出来ることを証明する書面

(以下のうちから必要に応じて)

  • 委託に係る契約書の写し
  • 兼職の内容及び業務の割合が確認できる書類
  • 兼職に係る事業所間の距離が確認できる書類

○当該事業者が、過去2年間のうちに、グループ企業内における外部委託に関する条件に違反したとして、整備管理者の選任義務違反とされた者でないことが記載された書面

(当該事業者が証明し、その押印又は自筆署名があるもの)

○被選任者が、過去2年間(規則第31条の3第1号又は第2号の規定の適用を受けて選任される整備管理者にあっては、5年間)のうちに、解任命令を発令された者でないことが記載された書面

(被選任者が証明し、その押印又は自筆署名があるもの)

  • 不適切な場合には届出時に指導すること。
③自家用において、整備管理者を外部委託する場合

○整備管理者が資格要件を満たしていることを証明する書面

(確認のポイントは①に同じ。)

○整備管理規程

<補助者を選任する場合>

  • 「5-1.整備管理者の補助者について」の(1)~(5)に定める条件を満足していることを確認。
  • 提示でも構わない。
  • 不適切な場合には届出時に指導するとともに、整備管理規程の内容が実際の業務に即していない場合には解任命令の発令対象となり得ることを通知すること。

○被選任者が、過去2年間(規則第31条の3第1号又は第2号の規定の適用を受けて選任される整備管理者にあっては、5年間)のうちに、解任命令を発令された者でないことが記載された書面

(被選任者が証明し、その押印又は自筆署名があるもの)

○被選任者が届出書の内容に同意したことがわかる書面

(被選任者の押印又は自筆署名があるもの)

○委託先の事業主の同意書

(押印又は自筆署名のあるもの)

○適切な車両管理が出来ることを証明する書面

(以下の全て)

  • 委託に係る契約書の写し
  • 整備責任者の氏名
  • 提示でも構わない。
  • 不適切な場合には届出時に指導すること。

4-3.兼職に係る欄の記入について

被選任者が兼職を有している場合には、その兼務している業務の内容(地位、権限)及び業務量が、整備管理者としての業務を遂行する上で大きな影響を有するので、整備管理者がその業務を適正に遂行できるかどうかを判断するため、規則第33条第1項第7号の規定が設けられているものである。

記載すべき兼職の職名は、当該事業における職制上の名称をそのまま記載させればよい。整備管理者が他の職名を有する場合であってもそれが整備管理者の業務に対して与えられたものである場合には、兼職を有することにはならないが、参考として、整備管理者の業務に該当する職名である旨を付記してその職名を記載させること。

業務内容については、職名の有無に関わらず記載を必要とするが、職名により業務内容が明瞭に判断される場合(例えば運転者、技工長等)は、これを省略させて差し支えない。

4-4.整備管理規程及び委託契約書の確認

整備管理規程及び委託契約書については、以下の内容を確認し、必要に応じて指導すること。

① 整備管理規程

  • 規則第32条第1項各号に掲げられる権限が付与されていること
  • 整備管理者が与えられた権限に基づき、適切に業務を行うこと
  • 外部委託の場合にあっては、必要な内容が明文化され、外部委託の条件を満たしていること
  • 補助者が選任されている場合にあっては、必要な内容が明文化されていること
  • その他、適切な車両管理を行う体制であること

② 委託契約書(上記に加えて)

  • 自家用において外部委託している場合にあっては、整備責任者が選任されていること
  • 自家用において外部委託している場合にあっては、整備管理者と整備責任者の連絡体制が整備されていること
  • 業務委託内容、業務方法及び責任が明文化されていること

なお、整備管理規程を策定するに当たって、整備管理者が参考とすることができるよう、支局等の窓口において整備管理規程の雛型を示す等、可能な限り、整備管理者の負担軽減に努めること。

4-5.届出をしなかったこと又は虚偽の届出に対する罰則

選任届出の届出期限及び内容の真偽の如何によっては法第110条第1項第3号の規定が適用され、20万円以下の罰金が課される。

今後、整備管理者制度を厳格に運用していくために、数度にわたる催促にもかかわらず3ヶ月以上もの間、届出を行わなかった場合や以下に掲げるような悪質な虚偽申請を行った場合については、法第110条に基づく告発を厳正に行うこと。

  • 届出された実務経験に虚偽があり、実際には、当該整備管理者が資格要件を満たしていなかった場合
  • 自動車整備士技能検定に合格していたことに虚偽があり、実際には、当該技能検定に合格していなかった場合

なお、その罰則の対象となる者は、使用者であって整備管理者ではないことに留意されたい。

<使用者の指導に当たっての留意事項>

5-1.整備管理者の補助者について

整備管理者は、法第50条に基づき、規則第32条第1項各号に掲げる業務を、原則として自ら執行する。

ただし、整備管理者が自ら業務を行うことができない場合は、規則第32条第2項に基づき、業務の執行にかかる基準を定め、これに基づき、予め選任された補助者を通じて業務を執行することができる(運行可否の決定及び日常点検の実施の指導等、日常点検に係る業務に限る。)。

業務の執行に係る基準は、次の条件を満足するものであり、かつ、条件を満足していることが整備管理規程により担保されていることが必要である。

補助者を置く際に定める「業務の執行にかかる基準」が満足すべき条件

(1) 補助者は、①整備管理者の資格要件を満足する者又は②整備管理者が研修等を実施して十分な教育を行った者から選任すること。

(2) 補助者の氏名等及び補助する業務の範囲が明確であること。

(3) 整備管理者が、補助者に対して下表に基づいて研修等の教育を行うこと。

教育をするとき 教育の内容
1. 補助者を選任するとき
  • 整備管理規程の内容
  • 整備管理者選任前研修の内容(整備管理者の資格要件を満足する者に対しては実施しなくてもよい。)
2. 整備管理者が整備管理者選任後研修を受講したとき
  • 整備管理者選任後研修の内容(他の営業所において整備管理者として選任されている者に対しては実施しなくてもよい。)
3. 整備管理規程を改正したとき
  • 改正後の整備管理規程の内容
4. 行政から情報提供を受けたときその他必要なとき
  • 行政から提供された情報等必要な内容

(4) 整備管理者が、業務の執行に必要な情報を補助者にあらかじめ伝達しておくこと。

(5) 整備管理者が、業務の執行結果について、補助者から報告を受け、また必要に応じて結果を記録・保存すること。

この基準を適切に定めず又はこれに違反した場合は、整備管理者の解任命令の対象となりうる。また、その結果適切な整備管理が行われず、定期点検が未実施であった場合等には、自動車運送事業者にも処分基準に基づいた処分を行うよう、厳正に対処されたい。

5-2.多くの自動車を使用している使用者に対する指導について

1人の整備管理者では車両管理することが困難であるほど、多くの自動車を使用している使用者に対しては、整備管理者の他に「5-1.整備管理者の補助者について」の補助者を任命させ、整備管理者の責任のもとに車両管理業務の補助をさせるよう指導すること。ただし、この際、整備管理者を本社等の役員が兼職し、運行可否の決定及び日常点検の実施の指導等日常点検に係る整備管理者の業務に止まらず、その他の業務までも補助者に完全に任せるなどの抽象的な存在となることは適当ではない。

あくまでも整備管理者は、各「使用の本拠ごと」に選任することが原則である。

なお、「使用の本拠の位置」とは、自動車検査証に記載されている使用の本拠の位置である。

5-3.整備管理者の兼職及び外部委託について

「兼職」とは、整備管理者がその選任に係る事業において整備管理者以外の業務を兼ねること又は他の使用の本拠においても整備管理者の業務を兼ねることをいい、「外部委託」とは、他の企業に所属する職員から整備管理者を選任することをいう。

① 兼職

整備管理者は兼職を行うことが可能であるが、兼職を行っている場合であっても必要な整備管理が確実に行われることが求められる。このため、下に掲げる管理体制の(1)、(2)の両者に適合することを兼職の条件とする。

また、兼職よって適切な車両管理の遂行に支障が生じると認められる場合には、自動車の使用の本拠ごとに整備管理者を選任するよう指導を行い、もし応じない場合には、車両管理が適切に行われていないことの確証を得た上で、解任命令を発令し、厳正に対応することが必要である。

兼職を行う際に満足すべき管理体制

(1) 兼職する業務内容が整備管理規程等により明確であり、かつ、兼職することについて雇用者又は事業場責任者が承認していること。

(2) 兼職に関わる事業者間の距離が、それぞれの業務を行うに支障とならないこと。

整備管理者が兼職をする場合、その兼務している業務の内容(地位、権限)及び業務量が、整備管理者としての業務遂行上、大きな影響を及ぼすので、兼職する場合には、整備管理者としての業務が適正に遂行できるかどうかを判断することとし、必要に応じて行政指導が行えるように規定している規則第33条第1項の規定に基づく記載事項を確認すること。

② 外部委託

○ 事業用自動車の場合(グループ企業内に限る。)

事業用自動車については、原則として整備管理者の外部委託は認めないが、以下に示す条件を全て満足する場合には、自企業内で選任する場合と同等の整備管理を行うことができると考えられるため、例外的に外部委託を認めることとする。なお、本規定はあくまでも例外であるので、厳格に運用されるよう留意されたい。

事業用自動車について、例外的に外部委託を認める条件

(1) 委託者及び受託者がグループ企業内であること。

(2) グループ企業が一体となって輸送の安全確保に取り組む体制を確保するため、安全管理規程及び整備管理規程その他必要な規程類について、次の条件を満たしていること。

  • イ) グループ企業が共同で作成していること。
  • ロ) 親会社等と子会社等の関係のみならず、子会社等同士の関係においても、親会社等を介して判断基準を統一することを目的として、親会社等が子会社等に対し指揮、命令及び教育を行う旨が明記されていること。
  • ハ) 整備管理者が委託者に対し財政面を含めた意見具申を直接行うことを目的として、定期(3月に1回以上)に会議等を開催する旨が明記されていること。

(3) 整備管理の適切な実施を担保するため、次の条件を満たしていること。

  • イ) 外部委託をすることについて、受託者及び受託者の事業主又は事業場責任者が同意・承認していること。
  • ロ) 整備管理者が他の業務又は役職を兼ねている場合、その兼職内容及び兼職に関わる事業所間の距離が、整備管理者の業務を行うに支障とならないこと。

(4) 当該事業者が、過去2年間のうちに(1)~(3)の条件に違反したとして、整備管理者の選任義務違反とされた者でないこと。

この条件に違反して外部委託していることが判明した場合、正規の整備管理者は存在しないこととなるため、整備管理者の選任義務に違反となる。このような場合にあっては、行政処分等厳正に対処されたい。

○ 自家用自動車の場合

自家用自動車の整備管理者を外部委託する場合には、管理体制が以下の(1)~(4)の全ての条件に適合することが必要である。

自家用自動車の整備管理者を外部委託する際に満足すべき管理体制

(1) 兼職する業務内容が整備管理規程等により明確であり、かつ、兼職することについて雇用者又は事業場責任者が承認していること。

(2) 兼職に関わる事業者間の距離が、それぞれの業務を行うに支障とならないこと。

(3) 整備管理者が外部委託されている場合には、規則第32条に定める業務のうち運行可否の決定、定期点検整備実施の計画の策定、定期点検整備記録簿等の管理、自動車車庫の管理並びに運転者等に対する指導監督について整備管理者を補助し、連帯して車両管理を行う、自企業の所属職員による整備責任者を設けていること。

(4) 整備管理者が外部委託されている場合には、委託先の事業主との間に取り交わされた業務委託の内容、責任等の内容が整備管理規程に明文化されていること。

<解任命令>

6-1.整備管理者の解任命令について

法第53条の規定により、地方運輸局長は、整備管理者がこの法律若しくはこの法律に基づく処分に違反したときは、その使用者に対して、整備管理者の解任を命ずることができることとされている。今般の見直しにより、整備管理者の義務を明確化したこと等から、今後は法令に基づき、厳正に適用されたい。

解任命令を発令することが適当な事例:

  1. 整備不良が主な要因となる事故が発生した場合であって、その調査の結果、当該自動車について日常点検整備、定期点検整備等が適切に行われていなかったことが判明した場合
  2. 整備不良が主な要因となる事故が発生した場合であって、その調査の結果、整備管理者が日常点検の実施方法を定めていなかったり、運行可否の決定をしていなかったりする等、整備管理規程に基づく業務を適切に行っていなかったことが判明した場合
  3. 整備管理者が自ら不正改造を行っていた場合、不正改造の実施を指示・容認した場合又は不正改造車の使用を指示・容認した場合
  4. 選任届の内容に虚偽があり、実際には資格要件を満たしていなかったことが判明した場合又は選任時は資格要件を満たしていたものの、その後資格要件を満たさなくなった場合
  5. 日常点検に基づく運行の可否決定を全く行わない、複数の車両について1年以上定期点検を行わない、整備管理規程の内容が実際の業務に即していない等、整備管理者としての業務の遂行状態が著しく不適切な場合

なお、ここでいう「事故」とは、自動車事故報告規則(昭和26年運輸省令第104号)第2条第1号、第3号及び第11号に定めるものをいう。

また、円滑な制度運用に資するため、解任命令を発動した際には事後に本省整備課まで連絡されたい。

なお、解任命令とは、運輸局長が直接整備管理者を罷免することでも、使用者に対して雇用契約の解除を強要するものでもなく、単に業務上不適格であるとの理由によって、整備管理者たる地位から他の地位に人事上の異動をすべきことを使用者に命ずるのみであって、整備管理者の責任の追及ではなく、むしろ使用者の責任を追及しているものであるといえる。しかし、解任された当人に対する社会的批判は必ずしもこの点について理解を有しないことが多いことから、いたずらに個人の尊厳を傷つけることのないよう留意しなければならない。

また、当然のことながら、解任命令を行うに当たっては、行政手続法に基づき適切に行うよう留意されたい。

6-2.複数の整備管理者を兼職している者の解任について

複数の整備管理者を兼職している者に解任命令を発令し、これによりその者が解任された場合には、その整備管理者は、規則第31条の4に規定する資格要件を満たさなくなることから、全ての使用者から解任される必要がある。

このため、ある使用者に解任命令を発令し、その命令に係る整備管理者が他の整備管理者を兼職している場合には、その使用者にも連絡し、当該整備管理者を解任するよう連絡すること。

仮に、使用者がこれに応じない場合には、その使用者に対しても解任命令を発令すること。

<選任前研修>

7-1.選任前研修の趣旨について

今般の見直しに伴い、使用者の負担軽減を図るとともに、整備管理者に求められる能力に応じた者を選任させるため、資格要件について見直しを行った。この一つとして、点検若しくは整備又は整備の管理に関する実務経験を有する者に対しては、選任前研修の修了を要件として追加したところである。

これは、近年、整備管理者に管理能力が求められているとともに、整備管理者になろうとする者は道路運送車両法等の法令の基礎的な知識を有していることが必要であることから、これらの知識・能力を備えさせることを目的としたものである。

一方、自動車整備士技能検定の合格者については、整備管理者としての能力を有していると解されることから、選任前研修の修了は必要ないこととした。

7-2.選任前研修のカリキュラム

選任前研修については、車両管理業務を行うに当たって必要な基礎的知識及び基礎的能力を備えさせるための項目である

  • 整備管理者制度の趣旨、目的
  • 整備管理者の業務、権限
  • 点検・整備の方法
  • 整備管理者の関係法令

等についての内容を中心として行うこととする。

選任前研修のカリキュラムの詳細については、各地方運輸局長等の判断に任せるが、可能な限り全国統一を図るため、以下のカリキュラムを参考にしつつ、実施すること。

また、受講者の管理意識の醸成を図るため、研修終了後、研修内容の習熟度測定を行うこと。

選任前研修カリキュラム

科目及び内容 時間(分) 備考

1. 整備管理者の役割

  • ①整備管理者制度の趣旨及び目的
  • ②整備管理者の選任を必要とする使用者
  • ③整備管理者になるために必要な資格
  • ④整備管理者の法定業務
  • ⑤整備管理者の研修の必要性
  • ⑥整備管理者の選任届出に関する事務手続きの要領
30

2. 自動車の点検整備(日常点検・定期点検)の内容

  • ①点検・整備の義務、目的及び体系等
  • ②点検・整備の内容及び体系等
  • ③日常点検の方法
  • ④日常点検の実務(車両異常箇所の見方と判断、管理事例等)
  • ⑤定期点検の方法
  • ⑥定期点検の実務(計画の要点、距離や時間に応じた部品の交換サイクル、管理事例等)
60
  • 可能な限りビデオや実車を用いること
  • 可能な限り実例を用いて説明すること

3. 路上車両故障等の発生状況とその防止対策

  • ①車両故障の発生状況
  • ②車両故障の事例及びその防止対策
  • ③車両故障に起因する自動車事故報告について
45

4. 車両管理上必要な関係法令

  • ①道路運送車両法の目的・体系
  • ②車両管理上必要な法、施行令、施行規則、保安規則及び自動車点検基準
  • ③上記関係通達
15

5. 車両管理の内容

  • ①車両管理の義務及び目的
  • ②車両管理の内容と実務(部品・資材管理・車庫管理等)
15

6. 運転者等に対する指導教育(方法と実務)

  • ①安全運転の基本(車両構造が運転に与える影響等)
  • ②自動車の構造装置
  • ③日常点検等点検整備の方法
  • ④車両故障や事故時の処置方法
15

7. 整備に関する行政情報等の提供

  • ①整備に関する行政情報(プレスリリース等)の提供
  • ②車両技術に関するメーカーの情報提供

8. 研修の習熟度測定

  • ①1.から6.までの研修終了後、試問形式等による習熟度測定を行う(設問については、1.から6.までの内容から行い、終了後、受講者自身による自己採点を行うものとする)
  • ②習熟度測定終了後は、試問等の内容について解説を行い、研修内容の理解を深めさせる
30

7-3.選任前研修の実施時期及び頻度

選任前研修については、可能な限り多く実施することが適切であるが、予算上、業務量上の制限から、実施頻度は受講者の数に応じて行うことが適当である。

現時点では、何人程度の受講が見込まれる場合に、実施すべきかについて定量的に示すことは困難であるが、予算の範囲内で可能な限り多く実施することが適当である。

また、支局ごとに少なくとも半年に1回(年2回)以上実施し、また、隣接する支局では実施時期をずらして行うことにより、可能な限り使用者の負担の軽減を図ることが必要である。さらに、緊急的に整備管理者の選任が必要であり、かつ、選任前研修を修了することにより、資格要件が得られる者がある場合であって、他の支局等で行われる研修を修了することができないような場合には、可能な範囲で臨時の選任前研修を実施することも必要である。

7-4.選任前研修修了証明書について

選任前研修を受講した者に対しては、当該研修を修了したことを証明する書面を交付すること。その様式については、別紙2のとおりとする。

選任前研修修了証明書の写しを選任届と同時に提出することにより、資格要件を満たす旨の証明となるため、必ず交付することが必要であり、また、その保管について、十分注意するよう指導する必要がある。

また、選任前研修修了証明書には有効期限は設けないこととし、いつ修了した選任前研修であっても認めることとする。

<選任後研修>

8-1.選任後研修の役割・必要性について

選任後研修は、運送事業者が選任している整備管理者に対し、選任後、自動車技術の進歩及び保安基準や法定点検項目の改正等の法令改正その他の自動車を取り巻く環境の変化を周知することにより、整備管理者の知識・能力を維持・向上させるために行っているところである。

仮に、当該研修が適切に行われなかったり、整備管理者が選任後研修を受けないまま車両管理業務を行った場合には、整備管理者が法令改正に伴う点検項目の改正を知らずに車両管理を行い必要な点検・整備を行わないまま自動車を運行させたり、新しい自動車技術に十分対応できないことから、適切な点検・整備を行わずに自動車を運行させるなど、自動車の安全確保、環境保全が図られなくなるおそれがある。

このことからもわかるように、選任後研修は整備管理者の管理能力を維持・向上させるため、また、適切な点検・整備を行わせるために、非常に重要であるといえる。

また、近年の自動車技術の進歩や自動車を取り巻く環境の変化は、過去に例がないほど急速なものになっていること等から、それに対応した車両管理を行わせるために、研修の重要性はますます高まっているところである。

8-2.選任後研修のカリキュラム

選任後研修においては、従来より運送事業者が選任している整備管理者に対して行っていたものを充実させ、かつ、車両管理の手法や自動車を取り巻く環境の変化等の情報提供を中心とした項目である

  • 近年の事故事例
  • 法令改正等
  • 自動車技術の進歩、使用実態の変化にともなう車両管理の手法

等についての内容を中心として行うこととする。

選任後研修のカリキュラムの詳細については、各地方運輸局長等の判断に任せるが、可能な限り全国統一を図るため、以下のカリキュラムを参考にしつつ、実施すること。

また、選任後研修は、従来どおり運送事業者が選任している整備管理者が対象であり、自家用自動車の使用者が選任している整備管理者は対象ではないので留意されたい。

選任後研修カリキュラム

科目及び内容 時間(分) 備考

1. 整備管理者の役割

  • ①整備管理者制度の趣旨及び目的
  • ②整備管理者の選任を必要とする使用者
  • ③整備管理者になるために必要な資格
  • ④整備管理者の法定業務
  • ⑤整備管理者の研修の必要性
  • ⑥整備管理者の選任届出に関する事務手続きの要領
0

2. 自動車の点検整備(日常点検・定期点検)の内容

  • ①点検・整備の義務、目的及び体系等
  • ②点検・整備の内容及び項目
  • ③日常点検の実務(整備の要点、車両異常箇所の見方と判断、他社のヒヤリ・ハット事例や管理事例等)
  • ④定期点検の実務(計画の要点、距離や時間に応じた部品の交換サイクル、管理事例等)
60
  • 可能な限りビデオや実車を用いること
  • 可能な限り実例を用いて説明すること

3. 路上車両故障等の発生状況とその防止対策

  • ①車両故障の発生状況
  • ②車両故障の事例及びその防止対策
  • ③車両故障に起因する自動車事故報告について
45

4. 車両管理上必要な関係法令

  • ①道路運送車両法の目的・体系
  • ②車両管理上必要な法、施行令、施行規則、保安規則及び自動車点検基準
  • ③上記改正内容に伴う関係通達の内容
15

5. 車両管理の内容

  • ①車両管理の義務及び目的
  • ②車両管理の内容と実務(部品・資材管理・車庫管理等)
15

6. 運転者等に対する指導教育(方法と実務)

  • ①安全運転の基本(車両構造が運転に与える影響等)
  • ②自動車の構造装置
  • ③日常点検等点検整備の方法
  • ④車両故障や事故時の処置方法
15

7. 整備に関する行政情報、整備に関連する業界情報、車両技術に関するメーカー情報の提供

  • ①整備に関する行政情報(プレスリリース等)の提供
  • ②その他の整備に関連する情報提供
  • ③車両技術に関するメーカーの情報提供
  • ④上記情報を取得するための法令に関すること
30

8-3.選任後研修の実施時期及び頻度

選任後研修については、運送事業者が法第50条に基づき選任した整備管理者であって「整備管理者として新たに選任した者」又は「最後に当該研修を受けた日の属する年度の翌年度の末日を経過した者」に地方運輸局長が行う研修を受けさせることとされており、実施時期及び頻度は、地方運輸局長の判断に任せているところであるが、「最後に当該研修を受けた日の属する年度の翌年度の末日を経過した者」が確実に受講できるよう実施されたい。

また、整備管理者として新たに選任した者については、選任された日の属する年度の翌年度の末日までに選任後研修を受講するように指導されたい。

なお、整備管理者は全ての地方運輸局において選任後研修を受講することができることから、整備管理者の研修の受講履歴について把握するとともに、他の運輸局から受講履歴について照会があった場合には、必要に応じて地方運輸局ごとに連携を図られたい。

8-4.選任後研修受講証明書について

選任後研修を受講した者に対しては、選任後研修を受講したことを証明する書面を交付すること。その様式については、地方運輸局に任せるが、可能な限り過去の受講履歴等がわかるものであることが望ましい。

ただし、地方運輸局及び支局等で、受講状況を確実に把握している場合に限り、当該証明書を交付しなくてもよいこととする。

8-5.選任後研修を受けない者への対処

選任後研修を受けさせることは事業者の義務であることから、研修を受講させない事業者に対しては、別途定める処分基準(「運送事業者に対する行政処分等の基準について」)に基づき、厳正に処分を行うこと。

8-6.自家用自動車の整備管理者の能力・維持について

自家用自動車の整備管理者については、法令上、選任後研修の受講が義務付けられていないものの、自動車技術の進歩や法令改正等の自動車を取り巻く環境の変化に対応した車両管理の方法やそのための知識・能力を有していることが必要である。

このため、整備管理者を選任している使用者は、整備管理者が業務を適確に遂行するために、その能力の維持・向上に努めることが必要であり、支局等においては、機会あるごとに使用者にその重要性について説明することが必要である。

今後とも、自家用自動車の整備管理者の能力の維持・向上については、使用者の自主的な取り組みに期待することとする。

<選任前研修・選任後研修共通事項>

9.研修の実施に当たっての留意点

研修の実施に当たっては、講師が資料を読むことにより説明するのみならず、ビデオ、実車などさまざまなツールを利用することにより、受講者が理解しやすい内容となるよう努めることが必要である。

また、研修の実施に当たっては、関係団体との連絡を密にしつつ、効率的・効果的に実施するとともに、研修の実施日及び会場の周知を図られたい。

<本省への報告>

10.本省への報告について

整備管理者に係る定期的な報告は本省整備課あてに別紙3の様式に記入の上、郵送及び電子メールにて、毎年度末現在(選任すべき本拠数については前年度末現在)の数を取りまとめて毎年5月1日までに報告すること。

なお、今後は、各支局ごとの数は本省には報告しなくてもよいが、各地方運輸局において各支局ごとの数を把握しておくこと。

また、報告にあたっては、下記の事項に注意されたい。

  • ① 研修の実施回数及び受講人数については、延べ数ではなく、実際に実施した回数及び受講した人数を報告すること。
  • ② 平成14年の法改正により、整備管理者の選任を要しなくなった使用者の整備管理者については、解任されたものとして報告に含めないこと。
  • ③ 本来整備管理者の選任を要さないが、使用者の独自の取組みとして選任している整備管理者(法第50条に基づかない者)については、報告に含めないこと。

附則

附則(平成19年7月9日付け国自整59号)

  1. この通達は、平成19年9月10日から施行する。ただし、「3-2.資格要件の解釈について」は、平成19年7月10日から施行する。
  2. この通達により外部委託が禁止される者について、施行時点で外部委託を行っている自動車運送事業者については施行日以降2年間、施行日以前に自動車運送事業の許可申請をした者については、その申請による輸送の開始の日から2年間、外部委託を継続することを可能とする。
  3. 前項の期間中に選任前研修の受講を予約した場合にあっては、当該予約による選任前研修を修了するまでの間は、前項の期間に関わらず外部委託を認めることとする。ただし、当該研修を欠席する等により予約日を過ぎても研修を修了していない場合を除く。

附則(平成21年11月24日付け国自整第94号)

  1. この通達は、平成21年12月1日から施行する。

附則(平成23年3月31日付け国自整第163号)

  1. この通達は、平成23年5月1日から施行する。

附則(平成28年12月8日付け国自整第241号)

  1. この通達は、平成28年12月8日から施行する。

附則(平成30年9月28日付け国自整第153号)

  1. この通達は、平成30年10月1日から施行する。