旅客自動車運送事業に係る
収益及び費用並びに固定資産の配分基準
一般乗合旅客自動車運送事業、一般貸切旅客自動車運送事業、一般乗用旅客自動車運送事業及びその他の事業に関連する収益・費用・固定資産の配分基準について詳しく解説します。複数の事業を運営する事業者様にとって重要な会計処理の基準となります。
基本概要
一般乗合旅客自動車運送事業、一般貸切旅客自動車運送事業、一般乗用旅客自動車運送事業及びその他の事業に関連する収益及び費用並びに固定資産(無形固定資産及び投資等を除く)は、その属する勘定科目ごとに、それぞれ定められた基準によって各事業に配分します。
重要事項
当該収益及び費用並びに固定資産が極めて少額である場合、又は主たる事業に比較して兼営する事業の割合が小さいため、配分基準の算定が困難である場合には、その金額を主たる事業に負担させるものとします。
配分基準の適用原則
- 勘定科目ごとに定められた基準を適用する
- 少額の場合は主たる事業に計上可能
- 兼営事業の割合が小さい場合は算定を簡略化できる
収益の配分基準
営業外収益
配分基準
営業収益の比率
適用方法
各事業の営業収益を合計し、その比率によって営業外収益を配分します。営業収益が大きい事業ほど、より多くの営業外収益が配分されることになります。
費用の配分基準
1. 営業費
(1) 運送費
イ. 人件費
配分基準
従業員の実働人日数の比率
※ ただし技工の人件費については車両修繕費の比率
ロ. 燃料油脂費
配分基準
当該事業在籍車両の総走行キロの比率(注1参照)
ハ. 修繕費
車両修繕費
総走行キロの比率
※ 外注修繕費、部品費等については、当該事業在籍車両の総走行キロの比率
その他修繕費
期末有形固定資産額(車両及び土地を除く)の比率
ニ. 固定資産減価償却費
車両減価償却費
当該事業在籍車両の総走行キロの比率
その他減価償却費
期末有形固定資産額(車両及び土地を除く)の比率
ホ. 保険料
車両保険料
当該事業在籍車両の総走行キロの比率
その他保険料
期末有形固定資産額(車両及び土地を除く)の比率
へ. 施設使用料
実在基日車数の比率
ト. 施設賦課税
期末有形固定資産額(車両を除く)の比率
事業用車両にかかるものは当該事業在籍車両の総走行キロの比率
チ. その他経費
- 事故賠償費 ー(各事業に直接計上)
- 道路使用料 ー(各事業に直接計上)
- その他経費 ー 実働延日車数の比率
(2) 一般管理費
配分基準
運送費(又は営業費から一般管理費を控除した金額)から減価償却費を控除した金額の比率
2. 営業外費用
イ. 金融費用
配分基準
(営業費(減価償却費を除く)の比率 + 期末有形固定資産額の比率)× 1/2
ロ. その他の費用
配分基準
営業費(減価償却費を除く)の比率
固定資産の配分基準
1. 全事業部門から旅客自動車運送事業部門への配分
配分基準
(営業収益の比率 + 期末専属有形固定資産額の比率)× 1/2
2. 旅客自動車運送事業部門内の配分
イ. 車両
事業用車両
当該事業在籍車両の総走行キロの比率
その他の車両
実働延日数の比率
ロ. 建物
営業所等現業関係の建物
実在延日数の比率
その他の建物
従業員数の比率
ハ. 構築物
実在延日数の比率
ニ. 機械装置
実働延日数の比率
ホ. 工具器具備品
実働延日数の比率(機械装置と同じ)
へ. 土地
実在延日数の比率
ト. 建設仮勘定
実在延日数の比率(土地と同じ)
注記事項
(注1)当該事業在籍車両の総走行キロの比率について
「当該事業在籍車両の総走行キロの比率」とは、事業計画上当該事業に配属されている車両が、当該事業以外の他の事業のために使用される場合において、当該事業に配属されている全車両の総走行キロと、これから他事業に係わる部分の総走行キロを除いた、純当該事業に係わる総走行キロの比率をいいます。
(注2)金融収益又は金融費用の配分に関する特例
金融収益又は金融費用の各事業への配分にあたっては、次に掲げる金額はあらかじめ控除して配分を行い、配分後に「その他事業」の金融収益又は金融費用として計上すること。
1. 不動産事業に係る借入金利息
不動産事業を営んでいる事業者が、商品土地・建物に係る借入金利息を金融費用として計上している場合の当該借入金利息の金額
2. 投融資額に係る収益・費用
次に掲げる事業者(経営する事業が1事業のものを除く)は、以下の金額を控除:
イ. 対象事業者
事業年度終了の日において、投融資額が固定資産の部の合計額の10分の1をこえる事業者
ロ. 控除金額
- 金融収益:投融資額に係る受取配当金及び受取利息
- 金融費用:{(期首投融資額 + 期末投融資額) × 1/2} × 実績借入金利率
※ 投融資額について
固定資産の投資等の合計額のうち、長期前払費用及び破産債権等並びに支払保険料、敷金その他の直接収入を生じないものは除き、流動資産である短期貸付金及び有価証券を含めたものとする。
まとめ
旅客自動車運送事業における収益・費用・固定資産の配分基準は、複数の事業を運営する事業者にとって重要な会計処理の基準となります。適切な配分を行うことで、各事業の収益性を正確に把握し、経営判断の精度を高めることができます。
特に重要なポイントは、「当該事業在籍車両の総走行キロの比率」が多くの費用項目で使用されること、また、少額の場合や兼営事業の割合が小さい場合は主たる事業に計上できるという実務的な配慮がなされていることです。
金融収益・金融費用については特例的な取り扱いがあり、不動産事業や投融資に係る部分は別途処理が必要となります。これらの基準を正しく理解し、適切に適用することで、各事業の実態を反映した財務諸表を作成することが可能となります。
配分基準の適用に際して不明な点がある場合は、税理士や会計士などの専門家にご相談いただくことをお勧めします。当事務所でも、貸切バス事業を含む旅客運送事業の会計処理に関するご相談を承っております。