貸切バス

一般貸切旅客自動車運送事業の
許可申請における欠格事由

貸切バス事業の許可申請において、道路運送法第7条に定められた欠格事由に該当する場合、許可を受けることができません。本記事では、申請前に必ず確認すべき8つの欠格事由について、詳しく解説します。許可取得を目指す事業者様は、ぜひご自身の状況と照らし合わせてご確認ください。

重要

以下のいずれかの欠格事由に該当する場合、一般貸切旅客自動車運送事業の許可を受けることができません。申請前に必ず全ての項目をご確認ください。

欠格事由とは

欠格事由とは、道路運送法第7条に定められた、一般貸切旅客自動車運送事業の許可を受けることができない条件のことです。これらは事業の健全性と安全性を確保するために設けられており、申請者本人だけでなく、密接な関係者や法人の役員にまで適用されます。

欠格事由に該当する場合、どれほど他の要件を満たしていても、許可を受けることはできません。そのため、申請前に必ず確認が必要な重要事項となります。

ポイント

多くの欠格事由には「5年間」という期間制限が設けられています。過去に該当事由があった場合でも、一定期間が経過していれば申請可能となる場合があります。

欠格事由1:刑事処分による欠格

1年以上の懲役又は禁錮刑を受けた者で、刑の執行を終了又は執行免除されてから5年を経過していない者は、許可を受けることができません。

該当する刑罰

  • 1年以上の懲役刑
  • 1年以上の禁錮刑

期間計算の起点

  • 実刑の場合:刑の執行を終了した日から5年間
  • 執行猶予の場合:執行免除された日(猶予期間満了日)から5年間

注意点

罰金刑や1年未満の刑は、この欠格事由には該当しません。ただし、道路運送法違反など、運送事業に関連する犯罪の場合は、別途考慮される可能性があります。

欠格事由2:許可取消による欠格(本人)

一般旅客自動車運送事業又は特定旅客自動車運送事業の許可取消しを受けてから5年を経過していない者は、新たな許可を受けることができません。

該当する事業

  • 一般旅客自動車運送事業(貸切バス、乗合バス、タクシーなど)
  • 特定旅客自動車運送事業

法人の場合の特例

法人が許可取消しを受けた場合、その当時の業務執行役員も同様に5年間は新たな許可を受けることができません。

業務執行役員とは

名称に関わらず、同等以上の職権又は支配力を有する者を含みます。取締役、執行役員、代表者など、実質的に業務を執行していた全ての役員が対象となります。

欠格事由3:許可取消による欠格(密接関係者)

許可を受けようとする者と密接な関係を有する者が許可取消しを受けてから5年を経過していない場合、許可を受けることができません。

密接な関係を有する者とは

  • 親会社:申請者の議決権の過半数を保有する法人
  • 子会社:申請者が議決権の過半数を保有する法人
  • 兄弟会社:同一の親会社を持つ他の子会社

具体例

A社(親会社)の子会社であるB社が貸切バス事業の許可取消しを受けた場合、A社や他の子会社C社も、B社の取消しから5年間は新たな貸切バス事業の許可を受けることができません。

重要

グループ企業で運送事業を行う場合は、グループ全体のコンプライアンス体制が重要です。一つの企業の違反が、グループ全体に影響を及ぼす可能性があります。

欠格事由4:事業廃止による欠格(処分通知後)

許可取消し処分の行政手続法による通知があった日から処分決定日までの間に事業廃止届を提出した者で、廃止届提出から5年を経過していない者は、許可を受けることができません。

該当する期間

1

通知日

行政手続法第15条による聴聞等の通知が行われる

2

この期間内に廃止届を提出

処分を免れるために廃止届を提出した場合

3

処分決定日

許可取消しの正式な決定がなされる

例外規定

相当の理由がある場合は、この欠格事由から除外されます。「相当の理由」とは、処分とは無関係に事業継続が困難になった場合などを指します。

  • 経営者の重篤な病気や死亡
  • 自然災害による事業継続不能
  • 事業環境の著しい変化(処分とは無関係)

欠格事由5:事業廃止による欠格(検査後)

検査実施日から聴聞決定予定日までの間に事業廃止届を提出した者で、廃止届提出から5年を経過していない者は、許可を受けることができません。

該当する期間

1

検査実施日

運輸支局等による特別監査や行政処分の検査が実施される

2

この期間内に廃止届を提出

検査結果による処分を免れるために廃止届を提出した場合

3

聴聞決定予定日

処分のための聴聞手続きが決定される予定日

例外規定

欠格事由4と同様に、相当の理由がある場合は除外されます。

注意点

監査や検査を受けた後に廃止届を提出すると、この欠格事由に該当する可能性が高くなります。検査前に正当な理由で廃止する場合は、その理由を明確に説明できる資料を準備しておくことが重要です。

欠格事由6:役員としての関与による欠格

欠格事由4の期間内に事業廃止届があった場合で、許可取消し処分に係る行政手続法第15条の通知日前60日以内に当該法人の役員であった者で、廃止届提出から5年を経過していない者は、許可を受けることができません。

該当する者

  • 処分通知日の前60日以内に役員であった者
  • その後、事業廃止届が提出された法人の元役員

具体例

事例:

  1. 2025年1月1日:A社に対して処分通知
  2. 2024年11月5日:Bさんが取締役を退任(通知日の60日以内)
  3. 2025年1月15日:A社が事業廃止届を提出

→ この場合、Bさんは2030年1月15日まで新たな許可を受けることができません。

例外規定

相当の理由がある場合は除外されます。これには、処分とは無関係の理由での退任や廃止が含まれます。

欠格事由7:未成年者の法定代理人の欠格

許可を受けようとする者が未成年者で、その法定代理人が欠格事由1、2、4~6、8のいずれかに該当する場合、許可を受けることができません。

法定代理人とは

  • 親権者:通常は父母(両親)
  • 未成年後見人:親権者がいない場合に選任される

実務上の対応

未成年者が貸切バス事業の許可を申請する場合、法定代理人についても欠格事由の有無を確認する必要があります。法定代理人が欠格事由に該当する場合は、成人するまで待つか、後見人の変更などの対応が必要となります。

補足情報

実務上、未成年者が貸切バス事業の許可を申請するケースは極めて稀です。通常は成人してから申請することが一般的です。

欠格事由8:法人役員の欠格

許可を受けようとする者が法人で、その役員が欠格事由1、2、4~7のいずれかに該当する場合、許可を受けることができません。

対象となる役員

  • 取締役:代表取締役、専務取締役、常務取締役など全ての取締役
  • 監査役:会社の業務執行を監査する役員
  • 執行役:指名委員会等設置会社における執行役
  • 同等の職権を有する者:名称に関わらず実質的に同等の権限を持つ者

実務上の重要ポイント

法人が許可を申請する場合、全ての役員について欠格事由の確認が必要です。役員の一人でも欠格事由に該当する場合は、以下のいずれかの対応が必要となります。

1 欠格期間が経過するまで待つ

該当する役員の欠格期間(通常5年間)が経過するまで申請を見送る

2 該当役員を退任させる

欠格事由に該当する役員を退任させ、新たな役員を選任する

3 別法人で申請する

欠格事由に該当しない役員で構成される別の法人を設立して申請する

特に注意すべき点

名目上の役員だけでなく、実質的に経営に関与している者も対象となる場合があります。「相談役」や「顧問」などの肩書きでも、実質的に同等の職権を有していると判断されれば、役員として扱われる可能性があります。

申請前に全ての役員(実質的な支配者を含む)について、過去5年間の状況を確認することが重要です。

欠格事由一覧表

8つの欠格事由を表形式でまとめました。申請前のチェックリストとしてご活用ください。

番号 欠格事由 期間制限
1 1年以上の懲役又は禁錮刑 刑の執行終了・免除から5年間
2 旅客運送事業の許可取消し(本人) 取消しから5年間
3 密接関係者の許可取消し 取消しから5年間
4 処分通知後の事業廃止 廃止届提出から5年間
5 検査後の事業廃止 廃止届提出から5年間
6 役員としての関与(60日以内) 廃止届提出から5年間
7 未成年者の法定代理人の欠格 法定代理人の欠格期間に準じる
8 法人役員の欠格 役員の欠格期間に準じる

まとめ

一般貸切旅客自動車運送事業の許可申請における欠格事由は、道路運送法第7条に定められた8つの要件から構成されています。これらの欠格事由は、事業の健全性と安全性を確保するために設けられており、申請者本人だけでなく、密接な関係者や法人の役員にまで広く適用されます。

特に重要なのは、多くの欠格事由に「5年間」という期間制限が設けられていることです。過去に該当事由があった場合でも、一定期間が経過すれば申請が可能となります。また、事業廃止に関する欠格事由には「相当の理由」による例外規定が設けられており、正当な理由がある場合は適用されないこともあります。

法人が申請する場合は、全ての役員について欠格事由の確認が必要です。役員の一人でも該当する場合は、その役員を退任させるか、欠格期間が経過するまで待つ必要があります。

許可申請を行う前には、必ずこれらの欠格事由に該当しないことを確認してください。不明な点がある場合は、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。当事務所では、欠格事由の確認から許可申請まで、トータルでサポートいたします。

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